隠れ家的レストランモレーナのインドカレーと世界を放浪したマスターの旅

脳梗塞闘病記

脳梗塞闘病記 10

退院してからの事

 発病5ヶ月後に旭川リハビリテーションを退院した。車イスからやっと杖歩行に変っていたが、 杖なしでは、歩けない状態であった。私の家は1階がレストラン、2階が住居である。当初は2 階で寝たり起きたりであったが、少しずつレストランの仕事(皿洗いなど)を手伝えるようになった。
しかし、それから半年後にフミちゃんがガンのために亡くなってしまった。(60歳)
私はとうとう1人になってしまった。子供もいない。これから先、この不自由な体でどうやっ て生きて行ったら良いのかわからなかった。それに追い打ちをかけるかのように、東日本大震災 が起きた。死者2万人以上、未曽有の大災害であった。仲間によるフミちゃんの為の追悼ライブ も中止となった。ネコのアーちゃんは何も知らず、ノドを鳴らしながら、私のヒザの上で眠って いた。 私は人間を廃業したかった。あらゆる事に絶望し、閉じこもり、誰とも会わず、毎日、酒を飲 み、CDで音楽を聴いて、他は何もしなかった。
ある日、外に出て見まわすと、庭も畑も駐車場 も雑草でボウボウになっていた。畑に四つん這いになり、豆や芋を植えた。フラつく体でブラシカッター(エンジン付草刈機)を振り回し 毎日草を刈った。やってみてカッターの柄が杖となり体のバランスを崩すことなく出来る事がわかった。
正月に店を閉めて半年たっていた。草を夢中で刈っている時、私はハッとした。「落ち込んでいる私を見たら、フミちゃんが一番悲しむだろう」と思った。「ひいきのお客さん達の為にモレーナを再開しよう。」と思った。そして次の日からモレーナをオープンした。最初はコーヒーやカレーを落し、お客さんが運んでくれた時もあった。しかし続けるうち、それが究極のリハビリとなったのだ。
退院して一年後には私は車を運転し、1人でなんとか店もやって行けるまでに回復したのである。犬と猫の世話もする。そして退院して10年後には旅行記を出版することができた。「昭和放浪記」「平成放浪記」ともに300ページの世界一周記である。
現在は第3冊目の「日本放浪記」を執筆中である。ちなみに私は現在78歳。レストランモレーナを続けている。ギターの弾き語りも再開し毎日歌っている。(完)

病床俳句 栗岩夢治(俳号)

  •  明け方の 光さす窓 まだ生きている
  •  病棟の灯り淋しくネコの影
  •  雪哀し入院の日の車椅子
  •  桜咲き退院まじかヒゲを剃る 
  •  病床へ届く手紙に春の文字 
  •  なにもかも流れゆく中雪しきり
  •  うたかたの命の上にも春陽さす
  •  退院を待ちわびて飲むコーヒーの苦さよ
  •  真夜中の救急車の音寒月心
  •  春来たり歩けぬ足のもどかしさ
  •  往く春をただ見送るだけの淋しさよ
  •  やわらかに白樺芽ふく晩成のはるかなり開拓の夢 (晩成社跡)

リハビリテーションメモ(熊谷先生から教えていただいた方法)

  • ●ブン回し歩行は腰に悪いから直す。(直さないといずれ腰がダメになる。)(歩く時、左ウデの力を抜き左足かかと内側から踏み込む。)
    • ①立つ
    • ②右足1歩前へ *腰を上げずに曲げる時、付け根から前に出す。
    • ③右足に重心をかける。 左足のかかとを上げて、ヒザから前に出す。(ブン回さずまっすぐに)
    • ④左足に重心を移す。 右足を前に出す。胸を前に出す。 以上を繰り返して歩行*腰をピョコピョコ上げないで歩く
  • シビレが来たら、立ち止まる。軽く腰の運動をやる。(骨盤の上下、回転)座って休む
  • ●腹筋トレーニング(毎朝と寝る前)
    • ①ベッドにあおむけになる。
    • ②ヒザを立てる。
    • ③オシリを上げる。(ヘソに力を入れて) 以上を繰り返す
  • *別バージョン  右足を左足のヒザに乗せてオシリを上げる。
  • ●腹筋強化 
    • ①ベッドにあおむけになる。
    • ②左ヒザを立てる。
    • ③右足を伸ばしたまま、ゆっくり上げる
    • ④右足を伸ばしたまま、ゆっくり下げる。  以上を繰り返す
  • ●座位姿勢を直すこと  
  • 左のシリの筋肉が落ちているため、左のオシリはペッタンコになっている。このため、座った時に体が左側に傾くので姿勢を保つため、上体に(右側の筋肉)力が入ってしまう。このため背骨がツイカンバンの少し上の所で曲がる。(鏡で見るとわかる)状態になり、ムリがかかる。
    • ①左のシリの下にタオル(たたんで)を入れて敷く
    • ②左のシリの下の骨の出っぱり(右ユビで確かめる)でタオルを押しつぶすようにして重心をかける。
      • *左ヒザを左右に押してグラグラするようなら重心が十分にかかっていない。     
      • *左腰背部に右ユビを当てて筋肉の働きを確かめる、筋肉に力が入っている状態は悪いが、筋肉の緊張がぬけている状態は良い
  • ●左腰背部の膨隆
    • ①右手ユビで膨隆部に触れる。(右足を足台に乗せて、イスにかける。ベッドに座り、右足を上げてベッドのフチに乗せる。
    • ②立ったまま、重心を左右に移動し、左腰を少し前に出す。この時右手ユビで左腰背部の筋肉の動きを確かめる。*膨隆がスッと消えるのを確かめる⇒筋肉の緊張が抜けるのがわかるはずである。立位、座位のバランスが正しければ、膨隆は生じない。
      • *筋肉の緊張がぬけた状態を(姿勢)歩行中も座る時も保つようすると疲れにくくなるし、腰にムリがかからない。
      • *鏡を見て直すのも良い。
  • ●左腰部の痛み
    • ①歩行する時に左足に重心を十分にのせること
    • ②左足を前に出す時に、どうしても左の腰をあげてしまうクセがある。左腰を必要以上に持ち上げないようにする。
      • *歩行を鏡で見て直すこと ◎このクセを直さないと、いずれ腰が破壊され、ダメになる。  
  • ●歩く時、腰(左)を引けないようにする
    • ①両ウデを後で組む。  
    • ②重心を左足に移し、右足を一歩前へ出す。左ヒザが曲がらないように注意!)  
    • ③重心を左足に移し右足を一歩後ろへ戻す。
      • *腰が引けるとヒザがロックしてしまう
      • *杖を腰の後にまわし水平にし、両ウデで保持して歩く  
  • ●寝ている時、肩に力が入らぬようにする。
    • ①左肩の下にバスタオルを入れるなどして、肩が浮かないようにすると良い。(水平あおむけ)  
  • ●肩のストレッチ
    • ①両ウデを後で組む。  
    • ②胸を広げ、肩甲骨を(左右)くっつけるようにする。
    • ③胸をもとにもどし力をゆるめる。
    • ④ ②③を繰り返す。  
  • ●歩行中首に力が入ってしまう。  
    • ①歩くのを止める、立ったままで深呼吸する。
    • ②肩を上にあげ、ストンを落とす。
      • *①②を時々やって、体の力をぬくとバランスが回復し、歩きやすくなる。
      • *書物、読書、絵の製作、工作など同じ姿勢を続ける事を強いられると肩や首、顔に力が入って、しまうので①、②、及び軽いストレッチ(肩、首)を時々やると良い。  
  • ●ロック寸前部の強化(歩行の時、重要)
    • ①ベッドに座り、両足を床につける。足(ヒザ下)を伸ばし、上げる。(足が床からはなれる)
    • ②止った所からさらに上げる。足先(ユビ)をグーと上に上げる。(5~10㎝)
      • *モモの外側の筋肉を使う。  
  • ●おなかを引きしめる
    • ①ヘソを引っこめるようにして、息を全部はき出す。
    • ②息を吸う。(自然に)   
      • 以上をくり返す。ムリをしない事。時々で良い。 おなかがフワフワだとおなかに力が入らず、肩に力が入るので、バランスが取れなくなる。  
  • ●左ヒザの強化A (*歩行の時、どうしても左ヒザが曲るので、それを直すこと)  
    • ①立つ、杖をつく。
    • ②左ヒザを少し曲げて伸ばしロック寸前で止める。
    • ③左足に過重をかけてやる。(75:25)
    • ④ ①、②、③をくり返す。  
  • ●左ヒザの強化B  
    • ①ベッドに座る。
    • ②左足を伸ばす。
    • ③さらに伸ばす。
      • *③の部分が大切 
        • ○ベッドの左側にあおむけになる→ヒザを立てる(左右)→左足を床におろす→左足をベッドに上げる→くり返す
        • ○ベッドの左側にあおむけになる→両ヒザを立てる→左足を床におろす→左足のヒザを伸ばす→足先を浮かせる→くり返す
        • ○ベッドにあおむけになる→左の手の平をひたいにのせる→右の手の平をその上に重ねる→両脇を閉じる→両脇を開く→くり返す   
  • ●杖歩行の方法(私の場合)
    • ①右足に重心をかける。
    • ②左足を前に送り込む。(付け根から曲げる、腰が引けぬようにヘソに力を入れ、オシリの穴をしめる事、上体を伸ばし正面を見る事)
    • ③左足に重心をかける。(充分にかける事)
    • ④右足をポンと出す。(カカトから着地)
    • ⑤以上をくり返す。手をふって歩く事、腹筋に力を入れる事。(息を大きくはく)
      • *時々、ベンチ、イスに座って休む事、ムリをしてはいけない。転ぶ‼      
  • ●芝生を歩く
    • ①右足に重心をかける。
    • ②左足を上に持ち上げながら前に出す。
    • ③左足に重心をかけ、右足を前に出す。
    • ④以上をくり返す

以上はリハビリの直後に、忘れぬようにメモした大要である。

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